小規模企業共済への加入に際して気を付けなければいけないところ
今まで小規模企業共済の、ある意味良い面だけをお話してきました。
初めから分かっているルールとしてわたしはデメリットとは思っていませんが、加入を検討される際に注意しておいた方がよいと思うことはあります。
予定利率1%
掛金に対する予定利率は、現在1%(2020年現在)
銀行に預けるよりは高い利率ですが、国民年金基金の1.5%よりは低くなっています。
掛金納付月数の6ヵ月未満、12ヵ月未満の注意
掛金納付月数が6か月未満の場合は全くの掛け捨てになります。
また、12か月未満の場合は、準共済金ならびに解約手当は戻らず掛け捨てとなってしまいます。
つまり、廃業や死亡、傷病での役員退任などの理由でも共済金をもらうには6ヵ月以上の納付が必要。
加入資格喪失や任意解約などの理由で準共済や解約手当をもらうには、少なくとも12ヵ月以上の納付が必要だということです。
掛金納付月数の240ヵ月未満の注意
掛金納付月数が240か月(20年)未満の場合、任意解約をした場合は元本割れをしてしまいます。
加えて注意することがあります。
小規模企業共済における「納付月数」とは、掛金月額500円を1口とした掛金区分ごとの納付期間となるということです。
例えば、以下の納付月数の場合を見てみます。
掛金額 |
掛金納付月(180ヵ月=3年) |
掛金納付月(+60ヵ月=計240ヵ月) |
月額20,000円(500円/口×40口) |
✖ | |
月額20,000円(500円/口×40口) |
〇 | 〇 |
加入当初は、月額40,000円(500円/口×80口)の掛け金で契約しました。
途中、3年目(180ヵ月)で掛金を半分の月額20,000円(500円/口×80口)に減額しました。
そして、残りの掛け金=月額20,000円分を240ヵ月までの納付し続け任意解約の申請を出しました。
この例の場合、通算納付月数240ヵ月と計算されるのは最後まで納付し続けた月額20,000分だけで、180ヵ月で解約してしまった月額20,000円の分は原本割れを起こしてしまいます。
任意解約の場合、納付月数240ヵ月~246ヵ月未満で支給率が掛金の100%です。
つまり、減額した20,000円の口に関しては元本割れ、続けた20,000円の口は元本通り、全体でみると元本割れになってしまいます。
加入者本人としては減額はしたものの、20年間払い続けた気持ちでいますから、えっという話になりかねません。
小規模企業共済における納付月数というのは、掛け区分ごとになるということはよくよく注意してください。
掛金の納付期間によっては任意解約をすることで、所得控除などの節税効果も飛んでしまうほどの損をする可能性があります。
途中解約をせずに済むよう、収入を安定させてから加入するということが大事です。
まとめ:小規模企業共済は個人事業主の強い味方。まずは検討を
今回は、独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が提供している小規模企業共済に対して調べたことをお話しました。
内容をまとめると以下のとおりです。
個人事業主や小さな会社の経営者にとって「将来の資産形成手段として優れているところ」
- 掛け金の全額所得控除
- 受給の際の退職所得控除を初めとする各種控除
支払う時ともらう時のダブル節税になるという話でした。
個人事業主や小さな会社の経営者にとって「日々の事業運営手段として優れているところ」
- 掛け金の範囲内での迅速で低利な貸付制度
- 差し押さえ禁止財産として法律によって資産が守られる
小規模企業共済への「加入に際して気を付けなくてはいけないところ」
- 現在掛金に対する予定利率は1%で、これは国民年金基金の1.5%を下回っている
- 掛金納付月数6ヵ月、12ヵ月の注意→積立金が掛け捨てになってしまうことがある
- 掛金納付月数240ヵ月の注意→納付月数は掛金区分毎の計算となり、減額した場合など原本割れの危険が生じる
退職金としてだけではなく、日々の事業運営にもありがたい制度であるいう話をいたしました。
同時に納付20年未満での任意解約は元本割れをおこすなど、気を付けなければいけないこともあるという話もしました。
まずは事業を軌道に乗せた上で早くに検討することで、この小規模共済制度は、個人事業主や小さな会社の経営者にとっての日々の、そして将来の「いざというときの備え」になってくれるのではないかと思います。
まだご加入をされていない事業主の方はこの機会に、小規模企業共済を検討してみたらいかがでしょうか。
共済受給額や節税額を「小規模企業共済の加入シミュレーション」