五十を過ぎてドラムを習いだした妻。
彼女が時々、言うのです。
’わたし好みのケースがほしいなぁ。’
彼女に言わせれば、市販されているドラムのケース類には可愛らしさが足りないそうです。
ならば、ぼくがつくる。
目標を一つ立てました。
妻が気に入る、格好よくてかわいい、革製のボディーバック式スティックケースを作る。
まずは、もう少し手軽なスティックケースを一度作ってみることにしました。
それを使ってもらいながら、彼女が望む仕様を詰めていくつもりです。
1. ロール式のスティックケースをつくる
ケースを作るならば、型紙が必要です。
まずはストレートに「ドラムスティック」に関係する型紙がちまたにないかを調べてみました。
大きな期待はしていませんでしたが、やはりその類の型紙は見つけられませんでした。
次に、分野は違っても流用できる製品がないかを調べてみました。
革製品作りに関してはわずかな経験しかないので、「裁つ・貼る・縫う」の基本工程でなんとかできる仕様が好ましい。
おっ、これは使える。
長さはかなり違いますが、形状はドラムスティックに近い。
工程も基本3工程でなんとかいけそうです。
巻いて収納する、ロールペンケースを模した「ロールスティックケース」を作ることにしました。
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1-2. 型紙をつくる
ロールペンケースの形状を参考にしながら型紙を作っていきます。
まずは、どんなものを・いくつ 収納するかを決めました。
- 妻が常用するドラムスティック(太さ14.2パイ×長さ409㍉)を4セット
- 小物入れがつけられればベター
という内容で図面を引いてみました。
三つ折り。
スティック2組(4本)をベースとして三つ折りにして、最後は上下に縫い付けた革ひもで留めるという仕様に当初はしました。
「巻く」ではなく「折り」にしたのは、小さなペンならいざ知らず、ドラムスティック4組計8本をぐるぐると巻ける気がしなかったからです。
革ひもの間にハトメを付けることにしたのは、ペンケースとは違って天地がかなり長いので、上下の革ひもだけで留まりが悪いならばここにもう1本ひもを通そうと考えたからです。
表側にはファスナー付の小物入れを2つ。
レンタルスタジオの会員権などを入れておくのに役立つでしょう。
スティックを入れるポケット部分は、ダミーを作って幅をあらかじめ確かめました。
はじめは紙で作ってみたのですが不安になって、結局は端切れを使って実際のポケットを作って試してみました。
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1-3. 薄く・柔らかい革を使う
今回の製作には、「薄い・柔らかい」革を使うことが前提。
厚く硬い革では、折れもしないだろうと思ったからです。
薄いとか柔らかいとか、こんな感覚的な条件に合う革を探すには、やはり現物を見て・触ることが必要だと思い、革販売の実店舗に行くことにしました。
そして購入したのがこの革。
オイルレザーで厚みは1.0㍉。
革にオイルを染みこませてあるだけあってかなりの柔らかさがあります。
サイズも、必要量では使いきれないほどの十分な大きさがありました。
厚み・柔らかさが条件に適していたということもありましたが、実はこの革を購入した決定的な理由は「焼印」。
ドラムのスティックケースは、このくらいワイルドな方がロックだろうと勝手に考えました。
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1-4. 刻印を入れたい
今回、刻印を入れたいと思いました。
妻は50を過ぎてドラムを習い出しました。
当時、二人で ’おばさんが始めたから、オバドラムだね ’ と話していました。
記念すべく、このドラムスティックケースには、この言葉「Obadrum」の刻印を入れたいと思っていました。
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1-5. すでに終了している加工とこの後
裁ち、床面(裏面)の処理、一部へりの処理、そして小物入れ部分のファスナー付けは済ませました。
小物入れ部分を本体に縫い付けた後では、ファスナーが取り付けられません。
表面処理剤には、保護効果を上げるためにウレタン樹脂が含まれているものを使いました。
定期的にメインテナンスすれば、長く使えることでしょう。
この後、刻印入れ・ハトメの取付などのオプション的な工程が残っていますが、基本は黙々と縫うのみ。
これだけの大きさですから、縫い糸の長さもかなりのものになるでしょうね。
取り回しも含め、完成までまだまだ時間がかかることを考えなくてはいけないようです。